コラム

2014年3月27日(木)

「受験生の戦略」と「スポーツ選手の戦略」

松波 晴人

 今日、ある方とお話をしていて、「自分を観察するのは難しい」という話になった。

 逆説的だが、「自分を観察」しようと思ったら、「他者を観察」した方が早い。
なぜなら、自分がどのようなバイアスや固定概念を持っているかは、自分自身だけでは気づくことが困難だからである。バイアスをもったまま、固定概念から逃れられないまま、いくら解釈を試みても気づきは得られにくい。

 なので、他者を観察して気づきを得た上で、自分を省みたほうが、気づきが得られやすい。

受験シーズンが終わろうとしている。多くの人たちが受験という関門をくぐっているので、ビジネスにおいて「他者(他社)に勝とうとするとき」には、知らず知らずのうちに、自らが経験してきた「受験」という枠組みで考えることが多いのではないだろうか。

 受験で勝つために重要なことは何だろうか?受験は「どうすれば勝てるか」の枠組みがはっきりとしている。決められた科目の試験の総合点で、高い得点をあげればよい。このような枠組みの中で勝とうとすれば、どういう戦略をとるべきだろうか?

 たとえば、A君は英語が大変得意だとする。一方、数学が苦手気味だとする。A君が受験戦争を勝ち抜くための戦略は単純である。得意科目の点数を維持しながら、苦手科目の点数をアップさせればよい。
あなたが自分のビジネス・業務で成果をあげようとする際、この「受験生の戦略」をとろうとはしていないだろうか?すなわち、得意分野は維持しつつ、苦手分野を高いレベルに引き上げよう、という枠組みで考えようとはしないだろうか?

 もちろん、業務内容によっては、そのようにしなければならない仕事も存在する。しかし、ビジネスにおいて、他社と差別化していくことを考える、というときには、「受験生の戦略」は「競争相手のB君に負けている科目で、追いつこうとする」ということでしかなく、決まった枠組みの中での最適化をすることに限定される。もちろん、それで他社に勝てるのであれば、その戦略でよいが、コモディティ化は避けられない。

 こういうときには、「スポーツ選手の戦略」をとる必要があるのではないだろうか。「スポーツ選手の戦略」とは、クラブ活動の中、レギュラーになるために、他者と違うポジションを見つける、という考え方である。投げるのが得意な選手は、打力は低いままであっても、まずは自分の得意分野をさらに伸ばすことで、絶対的なエースの存在を目指す。小技が得意な選手は、長打力を求める前に器用な2番バッターを目指す。「スポーツ選手の戦略」の中では、100点という上限は基本的に存在しないので、いくらでも伸ばす余地がある。

 自分で自分を観察するのが難しいのと同じで、こういった枠組みに自らがとらわれているかどうかは、自分では認識しづらい。「ひょっとするとこれは受験生の戦略をとるべきかな?」「今こそスポーツ選手の戦略でいくべきだ」といったように、「自分では見えないとらわれ」から自由になって常から考え続けたいものである。