コラム

2014年5月22日(木)

インサイトとソリューション、どちらが重要か?

松波 晴人

 新規ビジネスを起こしたり、新商品を開発したり、サービスの生産性を上げたり、といった困難なことに取り組むときに重要なのは、もちろんインサイトとソリューションである。

 インサイトとは洞察であり、物事の本質である。取り組もうとしている新規ビジネスについて、重要な洞察は何なのか。新商品を開発するにあたって、そのコンセプトを考えるにあたって重要な洞察とは何なのか。これまで「これが本質だ」と思っていたことが、「いや、こちらの方が実は本質ではないのか」と考えるのが、新たなインサイトを得る、ということである。

 ソリューションは、答えであり、対策であり、具体的に何をするか、である。得られたインサイトをもとに、どういう考え方で何をどうやって成果をあげていくか、ということである。

 さて、このインサイトとソリューション、どちらが重要だとあなたは考えるであろうか?
インサイトがなければソリューションも存在しないのだから、インサイトが重要だ、という考え方もできる。また、いくらインサイトがあってもソリューションがなければ成果をあげることができないのだから、ソリューションの方が重要だ、と考えることも可能である。

 私は、「もちろんどちらも重要であるが、どちらかといえばインサイトの方が重要だ」、と考えている。その理由を解説したい。

 新製品を開発するとする。たとえば、若い顧客をターゲットとしたシャンプーを開発することになったと仮定しよう。新しいシャンプーのコンセプトを考えるにあたって、まずは行動観察などを通じてターゲットを深く理解する。深い理解が得られれば、新たなインサイトが得られると同時に、自社が持っていた従来の考え方の枠組みに気づくことができる。

 若い顧客を深く理解した結果、
「世の中が厳しくなる中、若い人たちは勉強や仕事において成果を強く要求されるものの、周囲の人からほめられることが減ってきており、日常的な些細な行動においても確かな達成感を求めている」
という新たなインサイトが得られたとしよう。

 シャンプーについて、「髪を清潔に保ち、よい香りをつけて」というそれまでの枠組みはもちろん重要であり続ける。しかし、「シャンプーに達成感」という新しい方向性は、付加価値になり得る。

 「達成感を感じるシャンプー」というコンセプトで製品を開発すると、様々なこれまでと異なるアイディアが生まれる。たとえば、フタを閉めるときに心地よい音がして「フタを閉める達成感」が得られるようになっている。そして、泡立ちも「洗う達成感」を感じやすいように調整される。これらがコンセプトに基づく具体的なソリューションである。

 そしてこの商品が顧客のニーズにフィットして受け入れられ、ヒットしたとする。そしてここからが問題である。競合他社はもちろん、なぜこのシャンプーが売れるのか、その秘密を知ろうとする。しかし他社が知ることができるのは、クリック感のあるフタや泡立ち加減、という具体的なソリューションの方である。どういうインサイトに基づいてその商品を開発したのかを自ら公表しない限り、その商品が「なぜ売れるのか」を他社は直接知ることはできない。つまり、真似をしようとしても、末節的なところが真似できても、本質的なところが真似できないのである。

 これが、「インサイトの方がソリューションよりも重要」と考える理由である。しっかりとしたインサイトを持っていれば、そのシャンプーの次の商品開発でも成功する可能性は高いし、シャンプー以外の商品についてもインサイトをもとに開発することができる。

 インサイトは「単なる気づき」ではなく、「重要なビジネスの源泉」なのである。

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