コラム

2014年12月24日(水)

新しい年への新たな「希望」 それはクリエイティビティ

松波 晴人

イノベーションを起こすために必要な「マインドセット」

今年の新たなチャレンジングな取り組みから、新たな気づきとインサイトを得て、そこから大きな希望を持った。今回はこの「希望」についてご紹介したい。

行動観察研究所では、さまざまなクライアントさまから、
「どうすればイノベーションを起こせるか?」
「イノベータを育成したいがどうすればよいか?」
という質問をいただく。

特に「イノベータの育成」については各社とても悩んでおられるようである。イノベーションを生むための人材育成にはどの企業も熱心である。しかし、なかなか育っていないが実情のようである。それはなぜだろうか?

私の仮説はこうである。

各社がイノベータ教育として実施しているのは、「スキル」と「知識」がメインである。新しい発想を生むための方法論を理解して実践できるようになること(=スキル)、そして専門的な知識だけでなく幅広い知識を持つこと(=知識)、これらは絶対的に必要なことである。ただ、一つ重要なことが抜けている。それは「マインドセット」である。

つまり、前向きに世の中を積極的によくしていきたい、という思いや高い志がないと、いくらスキルや知識をもってもアクションにつながってこない。

つまり、イノベータを育成しようと思ったら、「スキル」「知識」に加えて「マインドセット」が必要だということである。

このインサイトを得るにあたっては、過去の膨大な行動観察で得られた気づきがヒントになっている。これまで観察させていただいた「様々な“場”における突出した優秀者」の方々は、高い「スキル」と豊富な「知識」を持っていたが、それだけではなかった。どの優秀者も「マインドセット」が普通の人とは全く違っていたのである。すべてのエネルギーの源泉は「マインドセット」であり、そのマインドセットをもとに積極的なアクションをとった結果として、「スキル」や「知識」を身に着けていた。

そこで、この「マインドセット」を育成する方法論の開発を行った。直近2か月という短期間ではあるが、実験的な内容も含めてすでに83人の方々に受講いただいた。マインドセット研修は、リフレームに必要なマインドセットとして以下の3つのマインドを促進する内容となっている。

1)チャレンジ精神: リフレームのためには、「慣れ親しんだ環境から離れない」のではなく、「自ら未知の場に飛び出して、思いっきり発想を飛ばしてみる」マインドが必要である。

2)他己実現: 「自分のためだけ」に頑張るのではなく、“場にいる人たち“の自己実現に向けて「他者のため」に頑張ろうとするマインドセットのことを指す。

3)前向きさ:辛い状況にあっても、自己効力感を失わず、前向きに取り組み続けることができるかどうか、というマインドセットである。

すべての人は、クリエイティビティを持っている

この「マインドセット研修」においては、受講者の方々には「それまでにやったことのない」事柄を「これまでと異なる発想で」いろいろとやっていただくことになる。挑戦的な内容も含めて様々なバリエーションのマインドセット研修を実施してみて、大げさでなく、私は日本の将来に強い「希望」を感じた。それは、この活動を通じて以下のことに気づいたからである。それは、

「すべての人は、クリエイティビティを持っている」

ということである。

我々は、「新しい発想は若い人にしか難しい」「画期的な発想ができる人とできない人がいる」とどこかで思っていないだろうか?それは違う。何度でも繰り返すが、「すべての人は、クリエイティビティを持っている」。現に、研修に参加されたバラエティ豊かな人たちは、驚くほどのクリエイティビティを発揮されていた。

では、なぜ「クリエイティビティは限られた人の能力」と思ってしまうのであろうか?

それは、そういった能力を育成・発揮する環境や場がないからである。マインドセット研修のように、「失敗してもいい」「チャレンジするのが仕事」といった環境と場が用意されれば、とたんに人はクリエイティビティを発揮しはじめる。年配の人であっても、そういったことが苦手そうだと周りから思われている人でも、創造性は必ず持っている。ある企業の上層部が、自社で行われたマインドセット研修を見学して、「わが社にはクリエイティブな人材がこんなにも埋もれていたのか」と驚嘆したほどである。

マインドセットの育成は、単なる「研修」にとどまらない。最終的には組織開発として考えるべき事柄である。個々人は「隠れたクリエイティビティの芽」を持っている。では、組織として、どういった環境と場を用意して「芽」を花開かせるべきだろうか?

その一例を挙げよう。前回のコラムで、私は「大失敗プロジェクトをしませんか?」と訴えかけたが、この発想をさらに広げて、「大失敗株式会社(通称DSP)」を設立してはどうか、と考えている。つまり、大企業が別会社として、「発想を広げ、リスクをとることをミッションとした会社」を立ち上げるのである。今、さまざまな企業では生産性が高くなりすぎたために、社員の日々の業務はほとんど「収束」に充てられている。「どういう計画にしようか」「これで●億もうかるのか?」「本当にそれでうまくいくのか?」という議論は、どちらも「収束の議論」である。今、我々が本当に時間をかける必要があるのは、「発散の議論」ではないだろうか?「発散」の後に「収束」させるのは必須であるが、「発散」させずに「収束」すると、そこではリフレームが起きない。

「大失敗株式会社(通称DSP)」の発想にわくわくして「やってみたい!」と思う人たちはたくさんいるはずである。そしてそれは、「世の中をよくしたい」というマインドセットを持った人たちである。「大失敗をすること」をミッションにすることによってクリエイティビティを発揮できる環境ができ、枠を超えた発想が生まれ、そして(多分に逆説的ではあるが)最終的には成功すると私は考える。