コラム

2015年1月30日(金)

マインドセットは、根性論と何が違うのか?

松波 晴人

最近、講演のたびに強調させていただいているのが、「マインドセット」の重要性である。主旨をごくごく簡単に説明すると、
“これまでと違った発想で、新たな取り組みを実施して成功させるためには、スキルや知識と同様に、「前向きさ」「チャレンジ精神」「他己実現」という3つのマインドセットが重要である”ということである(12月24日のコラムを参照)。いくらスキルや知識を持っていても、マインドセットがないと結局はアクションが取られないので成果を出すことができない、という仮説をもっており、それを様々な機会を通じて投げかけさせていただいているわけである。

基本的には、「それは新しい気づきだ」「そう考えるといろんなことに説明がつく」とポジティブな反応をいただくことが多く、仮説としての妥当性が高そうだと考えている。一方、「それは根性論ではないのか?」という質問を受けることがあり、私の説明が不十分で誤解を受けているようなので、本稿ではその点についてご説明したい。

根性論という英語が存在しないので、あくまで日本でのコンテキストで、ということになるが、「それは根性論では?」というとき、良い意味で使われることはあまりない。では、根性論とマインドセットはどういった点が根本的に違うのであろうか?

根性論においては、「気合があればなんでもできる」と考えがちで、それ以外の要素はあまり考慮されない。そのため、本質的な課題が何なのか突き詰めて考えられておらず、組織的な課題が山積みといった状況であったとしても、成果が出せないのは、すべてその人の精神の問題とされてしまうことがある。つまり、どれだけ状況が悪くても、精神の力さえあれば乗り越えられる、と考えるのが根性論である。

一方、マインドセットを考えるときには、「それさえ持てばすべて解決」とは考えない。組織上の問題、環境的な問題など、マインドセット以外の要素の重要性をも把握したうえで、さらにどういう物事のとらえ方、組織文化をもつべきか、について検討を行っている。この考え方においては、成果が出ないときには、人間の努力で乗り越えられる範囲はどこまでなのかを理解した上で、何が本質的な課題で、どういう手を打てば状況がよくなるか、を考えることになる。

例えば、飛行機のコクピットをデザインするとしよう。もし、根性論を前提にして設計すると、機械としての都合のみでコクピットが作られ、たとえどれだけそれが人間に使いにくいインターフェースであっても、操縦の困難さはすべて操縦士の「根性」で解決しなければならないことになる。人間は機械の都合に合わせなければならず、分かりにくさ・操作のしにくさから操縦士の負荷は増え、当然ながらミスも増えて事故のリスクは高まる。

操縦士も生身の人間であるから、様々な限界や特性を持っている。そしてその限界や特性は、どれだけトレーニングを積んでも克服できないものもある。この点を理解した上で、人間工学や心理学の観点から様々な考慮を行ってコクピットをデザインするほうが「合理的」である。

そして、その上で、操縦士のモチベーションや意識についてどうあるべきか、を考える必要がある。いくらシステムが素晴らしくても、最終的にそれを動かしていくのは人間である。操縦士が無責任でいい加減な操縦をすることは避けるべき事態なので、操縦士としてのマインドセットをしっかりと持ってもらうことは重要である。

このように、操縦士のマインドセットと、コクピットデザインの両面をしっかりと検討することで、飛行機事故のリスクを減らすことができる。

つまるところ、「あるべき姿(ゴール)を実現するためには、何が本質的であり、どこにどういう手を打てばいいのか」を複数の観点から考え続けることが最も重要である、ということであろう。

「何が本質的なことなのか」を常に考え続ける、というのは、科学的な態度である。しかし、人間は「習慣」にとらわれている生き物なので、「新しくて、より妥当性の高い」解釈は、「根性」という枠組みだけで見ると「甘っちょろい」と解釈されることもある。

たとえば、野球において投手の投球数を制限する、というのは、根性論からすれば、「何を甘いことを」と受け取られることもあるだろう。

しかし、スポーツにおいても今は科学的なアプローチが取られていて、そこではもはや「水を飲むな!」といったやり方は消え、「定期的に水分補給」という形に変わってきている。つまり、「根性というファクターだけで物事をみる」のではなく、「本当に妥当性が高いかどうか」「様々なファクターを観点として物事を見ること」が重要なのである。そういった考え方の中では、「選手の気持ちの持ちかた」も検討すべきファクターの一つとしてとらえられる。

根性論とマインドセットの議論の違いは、
「根性ですべてを解決」しようとする考え方と、
「様々な観点から何が本質的かを考え続けたところ、スキルや知識だけでなく、マインドセット“も”重要であり、現在見過ごしされがちな観点であるから、この点も考慮して解決」しようとする考え方、の違いであると言える。

今後は、ぜひ「スキル」「知識」に「マインドセット」という熱いエネルギーを加えて、より高いところまでジャンプしたいところである。

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